
現地からの【フィンランド通信】
◆夏至祭り(ユハンヌス)
夏至祭りはクリスマスと共にフィンランドの最も重要な祭りで、毎年夏至の日の近くの週末で過ごされています。北国の夏は明るく、フィンランド北部なら太陽は一切沈まないので、夏至祭りは光の祭りとして大昔から北欧で祝って来ました。今のフィンランド語のユハンヌスの名前はキリスト教の洗礼者ヨハネに因んでいますが、もともと自然宗教の雷神を祝う祭りだったらしいです。
フィンランドの夏至祭りの伝統には白樺の木が欠かせません。若い木を門やドアの脇に門松のように立たせたりして、木の枝を装飾として花瓶に入れたりすることもします。ナナカマドも多くの家で飾りとして使われていますので、とにかく初夏の花や青葉で家の中をきれいに飾ることは一般的です。沿岸地域では伝統的に蔓や花輪で飾られたポールを村の中心の広場に立てて、色々な催し物はその周りで行われています。
サウナで自分を清めるのも夏至祭りに欠かせません。暗くならない明るい夜を夜通しするので、その前に体と心を清潔にすることは大事で、日中からサウナに入る人が多いです。サウナの後は新ジャガイモや新鮮なサラダやスモークサーモンなど簡単に食べれるような料理をベランダや湖のほとりできれいな空気も味わいながら食べます。その後、夜8時以降はいろいろなイベントのために出かけます。
夏至祭りの伝承では、夫婦の幸福に関する呪(まじな)いも色々あります。夏至の夜、7~9本の野花を集めて枕元に置くと、夢の中で将来の配偶者に出会えると信じられています。同じように井戸を覗くと、水面に結婚相手の姿が見えます。また朝方に露に濡れた草原をベッドにして横になると、良い結婚生活が保証されるらしいです。夏至の日は大安のような縁起のいい日なので、伝統的に多くのカップルは結婚式をあげて祝わっています。
夏至祭りの夜になるとあちらこちらで焚き火がつけられ、近所の人はその周りに集まって踊ったり歌ったりして祝っています。もともと焚き火は悪霊を追い払うためにありましたが、今はただ雰囲気を高めるためのイベントになっています。ただ地域内で山火事警報が出ている場合は、焚き火が禁止されています。また、各地ではダンスパーティーも行われています。
かつては夏至を祝うために必ず田舎の湖畔に行くのが習慣でしたが、今は都市部にでもさまざまなフェスティバルやイベントが開催されます。夏至祭りの雰囲気を味わうために都会を離れる必要はもうありません。

◆サウナの入り方・フィンランド人が考えるサウナ健康法
最近のサウナブームで多くの日本人もフィンランドのサウナ文化について興味を持つようになってきました。何千年の歴史を誇る「サウナ」は元々フィンランド語で、フィンランドはまさにサウナの本場とも言えるでしょう。
伝統的にサウナは家の隣に一番先に建てられました。昔は体を洗う場所としてはもちろんですが、その他に魚や肉を燻製にしたり麦を乾燥したり赤ちゃんを産んだりしてきました。やはり清潔で暖かい、お湯が身近にあるので、生活の重要な場所でした。
今、サウナはどの家庭にもあるので、一軒家はもちろんですが、小さなアパートでもサウナ部屋を必ず作ります。ということでフィンランドのサウナの数は車よりも多く約350万あると想定されています。サウナに毎日入る人もいますが、ほとんどのフィンランド人は週に一二回入ります。サウナのない日はシャワーだけで十分です。
普通のサウナは着替え室と洗い場とサウナ室からなっています。一般的にフィンランド人は裸で入るので、着替え室で服を脱いで洗い場に入ってシャワーを浴びます。そして体がきれいになってからサウナ室に入ります。裸で入るので、男女は別々で入るのは当然です。混浴もありますが、家族はその場合裸で入るのに対し、職場の同僚や親しい仲間同士の場合水着を着たり時間をずらして女子は先にと決めたりすることがほとんどです。公衆のサウナではいつも男性と女性のサウナは別々にありますので、銭湯のように裸で入るのは通常です。場合によって水着とかタオルを巻いて入るのもOKですが、トレーナーとか靴のように服を着たりするのは厳禁です。また座る時にサウナ室で小さな専用のタオルを使った方が清潔です。ホテルのサウナはそれ用の紙シートが置かれています。
サウナ室に入ると木でつくられた階段と暖炉があります。薪または電気で温める暖炉はサウナの心で、その上に重ねた石が熱くなって、石の上に水をかけると「リョウリュ」という蒸気の「魂」がサウナ中に広がります。バケツとスクープが暖炉の隣にあって、その近くに座っている人は水をかける係りになります。礼儀として「かけていいですか?」と聞いてから、ゆっくり水を二三杯石の上に注ぐのはいいです。
サウナはまさに日本のお風呂や銭湯や温泉に匹敵するような生活の場になっているので、ごく自然にフィンランド人はリラックスしているところです。年齢制限はありませんので、生まれたばかりの赤ちゃんでも100才の祖父母でも安心して暑いサウナで汗を流すのが良いです。サウナの温度は通常80~90度ですが、伝統的なスモークサウナはそれよりも低く70度ぐらいです。100度以上のサウナは暑すぎてフィンランド人は入りたがらないです。
日本でサウナを紹介する時よく葉っぱで身体を叩いたりサウナマスターにアウフグースのパフォーマンスが行われたりしますが、フィンランドではサウナはリラックスする場所です。他の人に迷惑をかけなければ、横に成ったり足を延ばしたりして、好きなようにサウナで過ごしてもいいです。自分が気持ち良くなるのが目的です。葉っぱたたきですが、白樺の葉っぱで身体を「洗う」のは真夏の季節で、自分の別荘のサウナですることがほとんどです。
サウナの健康法でよく冷水を浴びることが多いですが、マストではありません。冷たいシャワーを浴びるとか寒水欲をするとか雪の中に潜るとか、色々な方法がありますが、ほとんどの人は体を温めるためにサウナに入るので、この健康療法は一部に限られています。しかし、サウナに入ってから、涼しいベランダなどで冷たいビールなどの飲み物を飲んで体を冷やしたりすることが良くあります。やはりみんな好きなようにすれば良いでしょう。これという正しい入り方はありません。
サウナは健康にいいことは確かです。定期的にサウナで身体を温めると血液循環や心臓は刺激を受けて、血圧が下がりますし、冷え性も治ったりすることもあります。またサウナは蒸気で湿度が高いので、喘息を患っている人にとてもいいらしいです。あと皮膚の血液循環もよくなって汗を掻いたりしますので、皮膚が美しく健康的になります。特にサウナの後にクリームなどを使うとよりいいらしいです。リラックスすることによって睡眠もよくなります。まだ経験がなければ是非サウナを一回でも試してみてください。

◆フィンランドのお酒の種類と楽しみ方
長い冬の北国フィンランドの一つの楽しみはお酒です。昔々バイキングの時代からビールが好んで飲まれていますが、18世紀から蒸留酒が作られるようになってからブレンヴィーン(brännvin, viina)とウォッカ(vodka)も一般的に楽しまれるようになりました。当時の言い回しで「貧しい家はお酒が一滴もない」というように、蒸留酒は幸福の証拠で、お客様が訪れるといつもお酒をふるまっていました。貴重なものなので、そのままストレートで飲まれるのが一般的でした。
19世紀からお酒を飲む習慣は荒っぽくなり社会問題まで発展しましたので、次第に禁酒運動が強くなりました。そしてアメリカと同じ時期に禁酒法が定められました。その関係でお酒は1919年から1930年代まで禁止されましたが、その後は次第にお酒の文化は再び楽しまれるようになってきました。しかしアルコールを制限する歴史が長かったので、強い酒は今でも国の指定したALKOという独占会社の酒屋でしか販売できません。ビールやサイダーのような8%以下のアルコール分なら普通のスーパーでも売られていますが、午前9時と午後21時の間に限られています。お酒の依存症はフィンランド人の間で今でも問題です。
しかし最近お酒の習慣は大きく変わってきています。若い世代の間では中央ヨーロッパと同じように食事と共にお酒を飲む人が増え、ご馳走の一環として考えるようになりました。一番人気のお酒の種類はやはりビールです。ほとんどの人はラガービールを飲んでいますが、近年エール・ポーター・スタウトなど少し特殊なビールも多く作られるようになりました。また伝統的に家庭で作られるサハティとカルヤというビールも業者が工場で作るようになりました。カルヤは甘苦い飲み物でアルコール分が少ないので、子どもでも飲めます。その代わりサハティはかなり強いので大人だけのものです。サハティの原料は大麦またはライ麦で、普通のイーストで発行され、ホップの代わりにジュニパーの実を使って味付けします。色は赤茶色で、味は甘くて濃い感じで、口当たりは炭酸がなく泡もないアルコール分8%以上の強いものです。伝統的に結婚式など大きなパーティーのために作られています。
今フィンランドで一番売れているビールのブランドはオルヴィ(社名)・カルフ(熊)・コッフ(社名)・ラピンクルタ(ラップランドの金)・カルヤラ(カレリヤ地方)・サンデルス(人名)です。発泡酒は日本で最近飲まれていますが、フィンランドでは売られていません。日本のキリンとサッポロとアサヒと同じようにそれぞれのブランドにはいろいろな強さと味の種類もありますので、自分の好みが見つかると良いですね。
ビールの味があまり好きでない方にお勧めできるのはリンゴや洋梨のサイダーや、またいろいろなカクテルです。特にロンケロ(Lonkero)というジンとグレープフルーツジュースのカクテルは人気です。50年前に発売されてから年々その売れ行きが高まって今は最も定番のお酒の一つになりました。
強い酒は独占企業が販売していますので、生産も限られています。蒸留酒で一番人気のブランドはブレンヴィーンのコスケンコルバ・ヴィーナという商品です。ALKOのコスケンコルバ工場で大麦で作られています。ヴィーナとウオッカは本来味があまりないので、カクテルの原料にもよく使われてきましたが、最近リンゴンベリーやブルーベリーなどの味付けの物もよく売られるようになりました。ウォッカのアルコール分は37,5%に規制されていますが、ヴィーナは自由に設定できます。たいていの場合はウオッカより低いので、飲みやすいです。ウオッカとヴィーナの飲み方ですが、4~6度に冷やして特にステーキなど重い脂っこい料理の後におちょこのような小さなグラスに入れて一気に飲み干します。フィンランドの蒸留酒は、原料の水と麦はとても品質が高いので、飲みやすいです。

◆フィンランドならではのお土産
何をお土産に買うのかはいつも旅行中の一つの楽しい悩みです。それぞれ人の好みもありますが、どのようなものが一般的にフィンランドのお土産として買われているかを語りたいと思います。
一番最初に考えられるのは美味しい食べ物です。フィンランドは食文化の伝統は浅いですが、大自然から得られる新鮮な食材はとてもいいお土産になります。ただ日本に輸入できないものもありますので気を付けなければなりません。規制されているのは生野菜や果物はもちろんですが、肉類もどんなに加工されたものでも輸入禁止です。フィンランドならトナカイの燻製(スオヴァス)の肉は酒のつまみに会うので、お土産にとてもいいのですが、やはりその楽しみはフィンランド国内に限ります。
肉や生野菜や果物は病気の拡大防止のため輸入できませんが、魚は海でつながっていますので、制限はありません。そのためフィンランドの美味しいスモークサーモンやニシンのマリネをお土産に買うことができます。もちろんこのような製品は真空にしても冷蔵保存が必要なので、帰国直前に購入した方がいいです。また飛行機の中はトランクの中に入れた方が保存がききます。ニシンのマリネはいろいろな味の製品が販売されていますが、お勧めはやはりジュニパー(juniper)の実やベリー(berry)味の酢漬けです。
生のベリーは持ち帰りできませんが加工した製品は大丈夫です。ベリーは例えばジャムやジュースや酒にした製品なら日本に輸入できます。ベリーの種類も多いので、その中から好きなものはきっと見つかるでしょう。フィンランドで一番多く森で生えているベリーはブルーベリーと同じようなビルベリー、そして少し酸っぱいリンゴンベリーです。リンゴンベリージャムは肉料理にも合うので、使い道はいろいろです。最近リンゴンベリー味のウオッカもおいしいと評判です。日本では北海道の夕張山地などでしか手に入らないような珍しいベリーなら、例えばクラウドベリーとチシマイチゴがあります。チシマイチゴ(Mesimarja)もクラウドベリー(Lakka)も甘いリキュールに加工したものは一番おすすめです。もちろんジャムもおいしいです。
お菓子の中でお勧めできるのはチョコレートです。1891年創業のファチェル(Fazer)や1871年創業のブルンベリ(Brunberg)はフィンランドで最も評判の高いメーカーで、いろいろな製品がありますが、現地の人に人気商品はファツエルならfazerin sininenの板チョコやアーモンドが41%も入っているWiener nougatのチョコ菓子で、そしてブルンべりの場合はTryffeliのトリュフチョコレートが一番です。チョコの他に100%キシリトール配合のガムもいいです。Jenkki Professionalなら甘味料の100%はキシリトールで他の甘味料は一切使われていません。あと有名な菓子の種類はナナカマドのベリーが入っているキツネ飴(Kettukarkki)です。塩辛いサルミアッキという真っ黒い飴もフィンランド人の間で人気ですが、一般的に日本人に大変嫌われているお菓子です。ただ友達をびっくりさせるためにお土産にいいかもしれません。
最近フィンランドの化粧品も話題になっています。自然の原料で作られているし、添加物もあまりないので、アレルギー対応で安全です。定番のメーカーはルメネ(Lumene)ですが、最近小さなハーブ園フランツィラ(Frantsila)の製品も人気を集めています。北欧のデザインも有名ですので、ガラス製品やアクセサリーなどは少し値段が高いですがお土産にはとてもいいです。ガラス製品の中でイーッタラ(Iittala)は長年の歴史を持ち、多くの有名なデザイナーの作品を今でも作っています。アクセサリーなら木製の製品を作っているアーリッカ(Aarikka)や伝統的なデザインを誇る銀を原料にしているカレワラコル(Kalevala koru)が有名です。最近話題になっている若々しい雰囲気のルモアワ(Lumoava)という会社の製品です。
日本で一番よく知られているブランドは少し高額ですが、やはりマリメッコ(Marimekko)と陶器のアラビア(Arabia)で、スカンジナビア半島の定番デザインとなっており、フィンランド国内でももちろん大変人気があります。運が良かったらマリメッコのブランド品はスーパーの安売りで見つけることもありますし、ヴィンテージ店でも品質のいいものも見つかる場合があります。マリメッコ以外に例えばフィンレイソン(Finlayson)という会社は布の模様はとてもユニークでフィンランドらしいです。また、小さな子ども服で「Newbie」は、可愛らしい北欧デザインのものです。あと、手工芸は大変盛んですので、ニットの手袋や帽子などもいいお土産になるかもしれません。大事なのは自分の趣味に合うようなものを見つけて購入することです。
以上、「フィンランドのこぼれ話」でした。