イタリア・トリエステ

トリエステ
精神医療
保健視察

イタリアの精神科領域の成功モデルとなったトリエステ。
その地域精神医療の中核をなす、
精神保健局、協同組合などを訪問し、
その成功システムに触れます。
 

2024年3月2日(土)~3月9日(土)

 
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1970 年「精神病院を捨てたイタリア」と言われたほど、 北部トリエステ県を成功モデルとして、イタリア全土で精神 科領域の地域ケアが発展しました。 精神科医であったバザーリアが、当時の鍵と鉄格子の閉鎖病 棟で行われていた従来型の病院の施設ケアから地域ケアに いち早く地域医療を取入れ,切り替えた退院促進支援システ ムでした。(のちに 1978 年バザーリア法の制定で、世界初 の精神科病院廃絶法となる)「精神病者」もあるがままの人 間的な存在になる「自由」があるべきで、「病気と付き合いながら地域で生活すればいい」と考えました。地域で尊厳を持って暮らせる人たちのために、ケア ホーム、グループホームなどが病院にとってかわり、そのような住居システムの環境が整備され、 徹底的に地域生活を支える体制が組まれていきました。 また傍ら、その新しい地域精神医療を支えたのが、「協同組合」でした。古くからイタリアでは協 同組合の文化があり、絵を書く組合、家具を作る組合、レストランで働く組合などなど地域に根差 した協同組合が、精神病者の就労復帰の受け皿として設立されていきました。それが日本における 「作業所」と決定的に違うのは、協同組合では充分に生活のできる賃金が得られ、患者たちは地域 で自立生活が可能だったということです。今回の視察では、トリエステを中心に、その地域精神医 療の中核をなす精神保健局と精神保健センター、協同組合などを訪問し、その成功システムを勉強 します。また、その地域医療で働く精神科医、看護師、社会福祉士、心理士、作業療法士、教育者 などの他職種専門家チームの連携・役割についても勉強します。

参加者からの声

日本の精神科医療機関の多くが私立で存在していることを強く再認識しました。地域精神保健システムやそれに基づく医療・福祉の予算の使い方も日本と違うのだと思いましたが、それ以上に違いを感じたのは、病気や障害を持っているかを気にする度合いの違いのようなものです。社会協同組合では、職員と利用者という日本では当たり前な関係性ではなく、あくまでも同じ目標に向かう仕事仲間という関係であることが驚きでもありました。


◆トリエステのように精神病院をなくす政策が進んだのは精神障害者の捉え方や思想が影響しているのだと感じました。日本の精神医療は病院を主体にして経過してきています。病院主体という考え方を取り払う事の出来なかった日本は精神医療の後進国となってしまったのだと思います。


◆精神保健局が効率よく組織化されていると感じました。また、看護師が医師と同等の立場で組織化されていることに驚きました。病院をなくしたことから精神科の看護師が活躍する場所を地域におき、その組織を作れたところがいいと思いました。
また、看護師として、自分の仕事に対するプライドを強く感じました。


◆日本には、社会的弱者とそれ以外の人たちが同等であるなどという思想はありません。常に「○○してあげる」という表現で表されます。そして上下関係があり、私たちはいつも支援する立場である意識が無意識に働き、当たり前であると思っていることに気が付きました。看護教育で、このような意識を植え付けているのではないかと考えさせられました。トリエステの社会協同組合では、社会的弱者が社会生活を送ることのできる環境、経済的な課題など難しい問題を抱えながらも形にして運営していることに皆様の努力を感じました。(おそらく福祉で国から支給されている費用が日本よりイタリアのほうが少ない中で、うまく住民の力を使っているところ)。また「協同組合=会社」という理解がとてもしっくりしました。しかも、福祉と保健に重点が置かれているため、精神疾患を持つ人にとっては、働きやすい環境だと感じました。


◆対象者の捉え方。日本では、対象を理解することは重要ですが、やっぱり症状に目が向いてしまい、その人ではなく病気を見てしまう事が中心になっています。
 人間志向の実践家がスタンダードであること。自由な活動が障害という文脈でなく社会に位置づけられていること。


◆地域精神保健システムの実際を見ながら、トリエステのような状況がイタリア全土で展開できているわけではないということを関係者から直接聞けたことです。システムの概要については、日本で文献を通してある程度理解していました。今回の研修に参加して、システムをつくること以上に、そのもととなる理念を継承し運営させていくことの難しさと素晴らしさに触れられたことがとても有意義でした。


◆基本的に入院ではなく生活の場である地域で治療の姿勢が徹底していること、それに伴う訪問支援の充実さを感じました。日本は在宅支援の選択肢が多い分、連携の難しさや分かりにくさ使いにくさを感じます。


◆今回の視察に参加したメインの目的が医療と地域福祉をつなぐ現場、住民の関わりについて知りたかった為、その現場を見ることが出来たことは有意義でした。小地域にエリアを設定し、専門職と地域住民が協働した活動であることが理解出来ました。 小地域で活動するからこその手厚さを感じ、住民主体で参加するまちづくりを見る事ができ大変嬉しかったです。


◆デイセンターと女性のアソシエーションについて、ヨーロッパの女性らしいオシャレな佇まいで、芸術的センスに溢れていて、居心地のよい場所を作っていると感じました。
日本ではあまり経験したことがない雰囲気で、とても自立している印象を受けました。日本だと、何となく他者を頼って生きている雰囲気があり、どことなくお互いに依存しあう甘えの構造の印象ですが、お会いした皆さん一人一人が、一人の人間として障害と向き合っている印象を受けました。